圧空・真空成形で失敗しない設計のコツ
初めて圧空・真空成形を採用される場合や、既に採用されている場合のVA提案 (Value Analysis: 既存製品の価値分析, 改善) など、様々な案件から多くのノウハウを得ることが出来ました。
その経験上、構想段階からご相談頂くことで、多くのご提案が可能となり、そのことが『失敗しないコツ』であることが分かってきました。
お客様と次のことをしっかり確認して、企画段階から成形化に向けた打ち合わせを行います。
(1) 成形品の使われ方
- 成形品が使われる環境は屋内か屋外か、またその温度はどれぐらいか等々の使用環境が分かると用途, 環境に応じた材料の選択が出来ます。
- 成形品を取り付ける際の寸法基準面と外観面が分かれば、型の凸型, 凹型の選択が出来ます。
- 成形品が外観部品なのか内装部品なのかが分かれば、圧空成形を使うか真空成形を使うかの選択が出来ます。
- 成形品を使用する際の『成形品に対して掛かる負荷』などの情報が分かれば形状の提案をすることが可能です。
- 成形品を取り付ける方向が分かれば、製作上注意を払わなくてはならない箇所が明確になります。
- 成形品に表示部などが取り付く場合、開口部はエッジ形状ではなく、わずかストレート部分を設けることで寸法と仕上げが安定します。
(2) 成形品との嵌合物を確認する
- 成形品をどう取り付けようとしているのかが分かる組図があれば、座繰りなどの加工の箇所や必要性が分かります。
- 接着部品が必要か否かが分かります。
- 取り付き方により寸法精度が必要な箇所が分かります。
- 型決めによる取り付け穴にするか、加工による穴にするかの選択が出来ます。
- 接着部品 (ボス, リブ) の形状のご提案が出来ます。
- アンダーカットを利用した成形品形状の提案が出来ます。
- 成形品以外に使用する部品をセット取りする提案が出来ます。
- 成形部品をリブや取り付け部品として使用する提案が出来ます。
- 成形肉厚により寸法にバラつきが出るので、型当たり面で無い側を基準面とした嵌合はお勧めしません。
(3) プラスチックの特性を考慮して設計する
- 樹脂は温度変化によって収縮します。設計の際には収縮率を考慮する必要があります。
- 皿ビスによる固定は“逃げ”がないことで温度変化の影響を受けることがあるので避けます。
- プラスチックは腐りませんが劣化はしていきます。
- 成形品のシボ処理について、材料に元から付いているシボは材料色調や成形時の転写具合によって見え方が異なる場合があります。
- 透明や艶がある材料で型当たり面側を製品外観側として利用される際は、わずかでも型にシボをつけることをお勧めします。
そうすることで異物 (成形時に型と材料の間に入り込む異物) や離型キズ (成形品が型から離れる際のキズ) が見えにくくなります。
透明性や艶の風合いを残したまま成形する場合は“仕様に応じて仕上げられた型”を使用し、“整えられた環境”で生産することが重要です。 - 材料には表面と裏面があります。裏面側は材料メーカーにより保証の対象外となります。
扱いによるキズや材料生産時の流れ跡 (材料が押し出される際につく線) が材料にもともと付いている状態で入荷します。
その為、弊社では材料の表面側を製品外観側として使用することをお勧めします。
(4) 圧空成形と真空成形の特徴を上手く利用する
- 材料が板状である為、薄肉で広面積な形状に成形するのに向いています。反面、筒のような間口が狭く高さがあるものは困難です。
- 成形工程と後加工工程が分かれているので、同一の型から製作した『加工違い品』の生産が可能です。
- 後加工の際に不要な材料部分を利用した部品製作が可能です。
- 圧空成形, 真空成形を問わず、溝や部分的な凹凸は材料が入り込むことを考慮する必要があります。
(5) 型と治具の出来が成形品の良し悪しを左右する
- 弊社では圧空成形, 真空成形とも型の更新費用は発生しません。(保証ロット数内)
- 弊社では安定品質提供の為、量産型はアルミ型を推奨しています。
- 弊社ではアンダーカット型にはスライドコアを使用し、手動ではなく自動動作にします。
- 型には必ず抜きテーパーを付ける必要があります。
(6) コーナー部に注意する (凹型の場合)
- 稜線が3方交わる部分は肉厚が薄肉になるのでR, C形状を取り入れます。
- コーナー付近は肉厚が薄くなり易い為、部品接着を検討する際はコーナー付近を避けた位置に接着します。
- 型がエッジ形状でも凹形状部分にはR1.0~R1.5程度のRがつきます。